THE ROOTS

INTERVIEW

人生、何かを始めるのに遅すぎることはない

吉田 美希

法律事務所クロリス吉田 美希

略歴

2011年司法試験合格、1年間の司法修習を経て2013年1月から都内大手法律事務所で勤務。
離婚・男女問題を中心に研鑽を積む。2015年5月、独立し、法律事務所クロリス開設。
以来、離婚・男女問題にとどまらず、自身の人生経験を踏まえ、 機能不全家族で育った人が人生でぶつかる問題に法的アプローチで挑んできた。
5年間で500名あまりの方から相談を受け、数多くの悩みを解決に導いてきた。

現在の仕事についた経緯は?

両親の期待に応えるためというのが一番正直な回答です。
そのため、小さいころから勉強は好きだったものの、法律の勉強にはなじめず、
ロースクール時代には精神的ストレスから病気にまでなりました。
弁護士になってからもずっとずっと悩んできて、ここ1年くらいでようやく自分が弁護士であることを受け入れられるようになりました。

修習修了後、家族の問題に一貫して取り組んできたのも、自分がずっと家族のことで悩んできたからです。
家族というコミュニティは、それが居心地の良いものであれば人生に希望や愛を与えてくれるものですが、
そこが殺伐としたものであれば人生に大きな影を落とし、活力さえ奪うものです。
私は、生きる中で新たに作った人間関係や家族で悩んでいる人たちの力になるだけでなく、
生まれたときから選ぶことができなかった家族との関係で悩んでいる人たちの力にもなりたいと思いました。
それはつまり、機能不全家族で育った人が人生でぶつかる問題を、法的なアプローチで解決していくということです。


機能不全家族で育った人を対象とする試みは、最初は手探りで始めました。
家族賛美や親を無条件に敬うべきという風潮も強い日本社会において、どれだけ必要とされているのかも予想がつかず、
とても勇気のいることでした。
しかし、はじめてみると、とても多くの方々からご相談をいただき、必要とされている分野であることを実感しました。

仕事へのこだわり

仕事でこだわっている点は、大きく2つあります。
一つは、自分が依頼されている事件の当事者には絶対にならない冷静さを保つこと、
もう一つは、クライアントの気持ちに寄り添い、それを必ず行動に反映させることです。

一見すると、この2つは矛盾していることのように感じますが、私は弁護士業務を車に例えるなら、この2つはいわば両輪だと思っています。

私は自分の人生経験を生かせる分野に注力していますから、その分、クライアントの抱えている問題は、
私にとっても他人事とは到底思えないようなケースばかりです。
しかし、私がクライアントと同じ土俵で怒りや悲しみを感じて感情的になるばかりでは
何も解決しません。
そればかりか、法律家としての目を曇らせ、有効な解決手段を探し出すことを邪魔します。
クライアントが求めているのは、何より、ご自身の抱えている問題の解決です。
ですから、法律相談の場など、クライアントの話を聞くときには、必ず心の中に自分で境界線をひいて、
法律家としての目線でケースを分析するように心がけています。

しかし、一方で、弊所にいらっしゃるクライアントは、皆、たくさんの心の傷を抱えた方々ですから、
その点への配慮は弁護士としてはもちろん、人としても忘れるわけにはいきません。
皆さん、努力家であり、一方で、幼少期から自分を責めることを余儀なくされてきたため、
繊細で自分を責めやすく、真面目という性質をお持ちです。
そのため、私の顔色をみて自分の話がわかりづらいのではないかと不安になったり、
私のアドバイスをきいて自分を責めたりしてしまう可能性があります。
そこで、私は、法律相談中、必ず笑顔でいること、クライアントの考え方や意見を修正する場合であっても肯定した上で一方的にならないようにアドバイスすることなど、
クライアントに寄り添う姿勢を必ず行動に反映させるようにしています。
心の中でいくら寄り添う気持ちをもっていたとしても、それをクライアントが感じ取ることができなければ意味がありませんから、
クライアントが少しでも安心できるよう、相槌の打ち方、笑顔、メールの文面、書面の書き方など、一つひとつの行動に寄り添う気持ちを込めています。

若者へのメッセージ

弁護士という仕事については、やりがいがあるが昨今は経済的に厳しい状況であるとか、
一方でまだまだチャンスは眠っているし、自由に働きやすいのでよい仕事だとか、色々言われています。
一人の弁護士として思うのは、それはどれもそれなりに真実だということです。
どの仕事でもそうだと思いますが、弁護士という仕事にも、良い面と悪い面があります。
そして、それは、結局弁護士という仕事に実際ついてみないと実感としてはわからないものです。

私自身、弁護士という仕事に魅力も感じてはいるし、この先も続けるつもりではあるものの、
もっと法的アプローチや弁護士倫理などに縛られずに機能不全家族の問題と向き合いたいという気持ちもあるので、
まだまだ自分がどういうキャリアを歩むのかどうか、正確なところでは未知です。

私の座右の銘でもありますが、「人生、何をするにも遅すぎることはない」と思っているので、
今後何歳になっても、興味があることには貪欲にチャレンジして、自分なりに充実したキャリアを歩みたいと思っています。

どのようなキャリアを歩むとしても、これからの時代は自分の人生を自分で切り開いていく気概が求められるように思います。
日本の大企業が前提としてきた終身雇用が崩れてきていますし、弁護士のような国家資格もそれをもっているだけでは
経済的に安定した暮らしは約束されない社会となりました。

絶えず努力や研鑽を求められるという意味ではとても厳しい時代ですが、
一方で、自分のアイデアや努力次第で、自分らしく働ける可能性を誰もが追及しやすい時代でもあります。
若い方々には、希望を捨てず、好奇心を信じ、色々なことにチャレンジして、自分らしさを見つけていっていただきたいと思います。

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。