THE ROOTS

INTERVIEW

Man for others

中野貴光

よしクリニック中野貴光

略歴

平成9年筑波大学医学専門学群卒業。東京女子医科大学の形成外科学教室に入局。東京大学医学部形成外科への国内留学、日本大学医学部形成外科でのオープニングスタッフとしての赴任等を経て、2年間アメリカのテキサス大学に留学。帰国後医学博士を取得。日本形成外科学会形成外科専門医、日本手外科学会手外科専門医、日本熱傷学会熱傷専門医、日本レーザー医学会レーザー専門医、日本形成外科学会小児形成外科分野指導医などの資格を取得。2019年6月に練馬で“よしクリニック”を開業。

現在の仕事についた経緯は?

私は3歳の時に重症のやけどで東京女子医科大学形成外科に入院し、植皮手術を受けて命を救って頂きました。その経験が根底にあったのだと思います。母が薬剤師だった関係で、医師はやりがいのある仕事だと聞いていましたが、医師という職業を特別意識してはいませんでした。高校2年生のとき職業適正テストを受け、私に合う職業として「医師」がピンポイントでマークされました。そこで、医師という職業について初めて真剣に意識するようになり、医学部受験を決めました。卒業後は自分が医師を志した原点と言える東京女子医科大学の形成外科に入局し、医師としての道を歩み始めました。

仕事へのこだわり

私の専門である形成外科では、体の表面を扱うため、結果が目に見える形で現れます。外科医はともすれば“難しい手術”にチャレンジしがちですが、私は“患者さんがして欲しい手術は何か?”を考え、そして、その手術に関して“自分が手術することが患者さんにとって最適か?”と常に考えることにしています。“誰にも出来ない手術ができる”ことよりも、“基本と呼ばれるような一般的な手術でも、誰にでもわかる差をつけて手術出来る”ことが、本当に技術のある外科医だと考えています。その為にどの様な手術でも常に改善点を探して、より良い結果を残せるようにしてきました。

形成外科では、傷跡を綺麗にするために切開線をジグザグにする手法など、デザインに様々な工夫があります。皮膚のシワの向き、皮膚の硬さ、部位、年齢etc・・・多くの要素を総合的に考えて手術を行うので教科書的な正解があるわけではなく、毎回熟考の上デザインを決定しています。新しいデザインを思いついて、就寝後に飛び起きた事もあります。
日本の医療制度では同じ手術ならば誰がどの様に手術を行っても基本的に値段は一緒です。どの様な工夫をしても報酬に反映されることはありません。また、ほとんどの患者さんにとって、同じ手術は一度しか受けないわけですから、その優劣はなかなか伝わることはありません。私のこだわりは単に自己満足になっていることも多いと思いますが、プロとして常に誠実に仕事を行う為に必要な事と考えています。

ですから、悩み抜いて工夫して手術を行い、その結果に患者さんから感謝の言葉を頂いた時の喜びはなにものにも代えがたいものです。

若者へのメッセージ

医師として仕事をする上で最も大切な能力は、コミュニケーション能力です。
もちろん勉強は必要です。知識と経験がなければ、時に人の生死を左右することのある医師という仕事を行うことはできません。勉強は最低条件であり、医師として必要な知識を得るための努力をすることは当たり前のことです。

しかし、どんなに知識や経験があっても、それが患者さんに伝わらなければ医療を行うことは出来ません。“医学”を学ぶ為には知識が必要ですが、“医療”を提供するには患者さんやスタッフとのコミュニケーション能力が必要なのです。

私は局所麻酔の手術中に患者さんと雑談をすることが多いのですが、それによって緊張がほぐれ、手術に対する恐怖心が和らぎます。話をするなかで更に信頼していただき、次の治療につながることもあります。

医師にはなかなか本音を言えなくても、看護師や受付スタッフには本音を伝える患者さんもいます。その情報を聞くことも医療を提供するための重要な要素であり、スタッフとのコミュニケーションも欠かせません。

これから医師を目指す皆さんは医学の勉強だけではなく、是非色々な人との出会いを大切にしてコミュニケーション能力を磨いて下さい。

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