THE ROOTS

INTERVIEW

良質な佇まいをデザインする

龍輪誠

あめとつち株式会社龍輪誠

略歴

東京生まれ。工業高校卒業後、職人を経験。その後デザイン業界に転職。
昼間はインテリア デザイナーのアシスタント/夜は専門学校へ。
しかし、日中の仕事が過酷すぎて卒業はせず。
その後、デザイン会社に入社。在職中、グラフィックデザインという世界に興味を持つ。
印刷や ウェブ・映像などの技術的知識を身に付けフリーランスへ。
多くのアパレルブランドの立ち上 げや有名アスリートの独立支援、
カフェプロデュースなど、様々なスタートアップ企業の事業 計画に参画。
その後、広告代理店へと入社するがリーマンショックの煽りを受け、
再びフリー ランスとして出発を決意する。
不況の最中、某大手広告代理店や企画会社から業務を委託。
メガバンクや証券会社を中心に富裕層向け企画など様々なクリエイティブ案件を担当する。 現在は、デザイン会社を設立。
「あめとつち株式会社」の代表兼クリエイティブディレクター。

現在の仕事についた経緯は?

よく聞かれますが、私の場合は、
いまの仕事であるデザイン業やデザイナーという職業を目指してたという訳ではないので、仕事についたという自覚があまりないですね。
いまでも、何の職業で、何の仕事をしているのか、自分でもよく分からなくなることがあるくらいです(笑)。
なので、興味のあることを好き勝手にやり続けているうちに、そこで得た経験や技術・知識を必要としてくれる人達が段々と増え、
いまは仕事として「メシが食えるようになってきた」という感覚に近いと思います。

キッカケも近所の面倒見の良いおばちゃんが、
「子どもの頃、絵を描くのがうまかったからデザイナーになれば?」と
半強制的にアシスタントとして働かされたというだけです。
これが恩師との出会いであり、デザインという仕事を知ったキッカケです。

なので、私の場合は皆様のように立派な受賞歴や学歴がある訳でもなく、
そんなことを考えてる暇があれば、同年代より「1日でも早く現場へ立ち、1つでも多く仕事しろ」
と先輩方に言われながら日々の仕事についてきた感じです。

仕事へのこだわり

私の場合は下積みが長かったこともあり、職人時代の親方やデザイン業の恩師も
古い考えの人が多く「百聞は一見にしかず」と教わってきました。
なので、道具すら初めは触らせてもらえなかった時代ですね。
職人であれば工具、デザイナーであれば筆。2000年くらいから、ようやくパソコン(PC)です。
当時のPCやプリンターは会社に1台、多くて数台しかないような高額マシーンでしたので、仕事現場ではなかなか触らせてもらえませんでした。これが私の新人時代です。

ただ今考えるとこの経験が、現在の私にはとても役に立っています。
業界に飛び込んだのも早かったですし、独立も早かったので、
同じ歳くらいのデザイナーよりも経験が長く、同期も結構な目上の方々の場合が多かったです。下積みが長かったこともあり、同年代が学校でデザインを学んでいる期間にも、
私は現場経験をひたすら積んでいましたので、仕事では経験豊富な方が有利なので、
重要プロジェクトを任せていただける機会も多く頂けましたね。
「継続は力なり」です。

また、「百聞は一見にしかず」と教わりながら、ひたすら走ってきましたが、
ここからは現場で使えるプロセスの多くを学びました。
この言葉は中国の漢書「趙充国(ちょうじゅうこく)伝」にある
「敵地を自分の目で見てくわだて、戦略を立てろ」という話が由来となっているそうです。

この考えは、いまの仕事でも大切なこだわりの一部となっています。
いちど実際に自分の目で見るほうが確かであり、
そこから感じたものが商業デザインとして具現化され、
多くの人々の心を動かすことができるような仕事を1つでも多くしていきたいですね。

若者へのメッセージ

私もPCで仕事をする人が少なかった頃から働いてましたので、
「最近の若者は・・」とか、「手書きができなければ辞めろ」とか、
「おまえはデザイナーに向いていない」等々、先輩方に散々言われてきました。
「デザイナーなんか、なれっこないよ。早く職人に戻れ!」と友人達にも言われてました。
そんな私でも、いまは仕事をいただけるようなデザイナーになれましたね。
現在では考えられないような時代でしたが、感謝しています。

こんな感じで生きてきましたので、
もちろん輝かしい受賞歴や立派な資格・学歴などもありません。
でも、軸をブラさず続けていると応援してくれる人やチャンスをくれる人は必ずいます。
しかし、残念ながら準備やアンテナを張っていなければ、そのチャンスにすら気づきません。

最近は多くの情報を得ることもできますし、
失敗してもいいと言ってくれる企業も多く、若者にとっては有利な時代です。
また人手不足など若者へは過保護な状況にあるということもあり、
きつくなるとすぐに辞めてしまうといったこともよく聞きます。
仕事の失敗では怒られるのが当然です。理不尽なこともあると思います。
ただ、人生の失敗ではないので、自分が本来やるべきことを見つけるため、
「何度でもチャレンジできる」のが若者の特権だと思います。
多くのチャレンジが出来るうちに、多くの人に助けられ、多くのチャンスを掴んでください。

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。