THE ROOTS

INTERVIEW

和して同ぜず

杣源一郎

自然免疫応用技研株式会社杣源一郎

略歴

東京大学・薬学部卒。帝京大学教授、徳島文理大学教授、香川大学客員教授、新潟薬科大学特別招聘教授などを歴任。中国との横断的研究により中国友誼賞、バイオビジネスコンペJAPAN優秀賞などを受賞している。保有知財多数。現在は大学教授、経済産業省認可 自然免疫制御技術研究組合 代表理事、また全国で初となる食品機能性の認証制度であるヘルシーフォーの代表評価委員等多方面で活躍。著書には『「病」になる人、ならない人をわけるもの(ワニプラス)』、『「免疫ビタミン」のすごい力(ワニプラス)』などがある。またLPSの有用性に関して日本テレビの「世界一受けたい授業」、フジテレビ「その原因、Xにあり!」などにも出演。

現在の仕事についた経緯は?

帝京大学での教授時代の1989年に、研究成果の社会還元を目的に、恩師である元東京大学副総長 水野傅一先生とともに、知財を管理する大学発ベンチャー「バイオメディカルリサーチグループ」を起業。この知財を活かし、実際に研究シーズに基づく商品を自分たちの手で世の中に出すため2006年に高松市で自然免疫応用技研株式会社を創業しCEOとなった。創業にあたり、帝京大学時代に研究活動に携わっていた河内千恵氏をCOOとして、稲川裕之氏をCTOとして招聘して現在に至る。世界で初めてLPSを市場化することに成功した。

仕事へのこだわり

研究者であることを踏まえて、できる限り科学的な事実に基づいた情報を発信すること、かつアグレッシブに挑戦する姿勢を大事にしてきた。また世の中の常識を疑ってかかるということを徹底してきた。現在の仕事はその延長線上にある。

科学の世界は、とても保守的である。また研究者人口が多い分野の研究を行っていれば、必然的に獲得できる研究費も増える。機会が多いからである。しかし誰もやっていないことを行う事や、これまでの常識に反する研究を行おうとしたら逆風は強く、研究を継続していくことには相当の困難が伴うので覚悟が必要である。だから、常識から外れた事実を発見した時には、それが真実により近いかどうかを慎重に見極めなくてはいけない。逆に真実であると確信できれば、例え常識と180度異なっているとしても、研究者として科学者の背骨として、真実であると確信する事実を追求する姿勢が大切である。ただし実際の遂行に当たっては、世の中はほぼ完全に敵になると考えた方が良い。

ところで、研究成果を社会還元することを意識することは重要であると思う。基礎研究の重要性が盛んに叫ばれており、その点は否定しないが、基礎研究といえどもその研究がどのように社会貢献できるかということは常に意識されるべきと考えている。単に即物的に成果を得ようとして現代のニーズにマッチした研究を行うことを推奨しているのではなく、全く社会貢献とは無縁と思われる研究であっても、どのように社会貢献できるか、社会還元する具体的な取り組みはなにか、を車の両輪のように考えることである。

以上を要約すると、長年、『fact is fact』に基づいて、それが現在の科学の常識では受け入れられないとしても、科学者の良心に従って研究は進められるべきであるし、一方で研究とは直接関係ないものの、成果の社会還元を常に意識することに尽きると考えている。蛇足ではあるが、自分としては、以上はとても自然であり、普通だと考えているが、周囲からは変人、奇人、などと思われている様である

若者へのメッセージ

近ごろの若者は、という「上から目線」の言い方は好きではない。そんなことを言ってみたところで若者が受け入れるはずもなく、却って『勝手なこと言うんじゃないよ、ジジイ』などといわれるのが関の山である。自分の経験に照らして分別臭いことを言って、それを若者が聞くというように考えているとしたら能天気である。自分の若い頃を考えてみればわかる。

私もそうであったし、多くの年配の方が言っているが、若者は自分で信頼する年配者を見つけるのである。私淑である。つまり若者は自己選択をしている。従って、若者に言うことがあるとするならば、「この人は自分にとって大事なヒトである」ということを見抜けるような感性はある方が良いということではないかと思う。

それより大事なことは、若者から私淑してもらえるように、年を取ってきたらさらに自分磨きをすることではないか。そしてより個性的になるべきであると思う。何千人ものファンがいるようなアイドルになる訳ではない。若者の中で数人でも自分に私淑してくれれば以って瞑すべし。大いに大事にして、その時こそ、若者に向かっていろいろな経験から得た自分自身の考え方などを伝えて行けばよいのだ。

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